株式会社 シーメイダ

「長寿の秘密」と腸内細菌 京丹後からの最新報告 (内藤裕二・京都府立医科大学院教授が腸内細菌学会の講演で)

 なぜこのまちにはこれほど長寿の人たちが多いのか。その秘密は、腸内細菌に影響するライフスタイルにあるのかも知れません。日本屈指の長寿地域として知られる京都府の京丹後市。そこで高齢者に寄り添いながら長期の調査研究にとりくむ内藤裕二・京都府立医科大学大学院教授が、最新の成果を6月末の市民公開講座で語りました。

【連載】腸から始める長寿生活の過去の記事はこちら

内藤氏の講演は6月27日、東京都江戸川区のタワーホール船堀でひらかれた第27回腸内細菌学会学術集会・市民公開講座「腸活のすすめ」として行われました。(写真下)

全国平均の3倍の長寿を誇る京丹後市

 お話するテーマは「長寿コホート研究(注)から見えてきた食と腸内細菌の関連」です。ポイントは、「長寿のために何を食べるか」ということになります。
私たちは2017年から、日本有数の長寿地域といわれている京丹後市で研究を続けています。京丹後市は京都府の北部の日本海側にあります。
長寿コホート研究とは、そこで非常に健康で長生きされているおじいちゃん、おばあちゃんに寄り添って、データを取りながらずっと追いかけるという研究です。
どういったことをしていたら健康で長生きできるか。どういったことをしていたら病気になるのか。15年から20年をかけて追いかけると、何が大事かが見えてくる。残念ながら、まだ6年しか追いかけておりません。それでも現状でわかることを、きょうはお話しさせていただきたいと思います。
京丹後はそんなに大きなまちではありません。65歳以上の方は2万人もいらっしゃいません。私たちはその方々にお願いをして、採血をしたり、歩行速度や握力を測ったりして長生きの秘密をさぐっています。腸内細菌も調べますし、重要視しているのは、「何を食べているか」ということです。
世界最高齢の男性であった木村次郎右衛門(2013年に逝去)の記録は、この京丹後市から生まれました。116歳54日という記録はいまだに破られていません。

ここで私達が研究を始めた頃には、10万人あたり100歳を超える方が155人いらっしゃいました。全国平均は53人ですから、およそ3倍です。 こういうデータを出すと、「みんな寝たきりではないのか」とよく言われるのですが、そんなことはありません。太陽が昇れば畑に行き、海に行き、山に行き、自分たちの食べるものは自分で作ります。 コンビニができたのは今から5年前です。まだまだ自分たちでいろんなことをしていこうという地域であります。

「生物学的老化スピード」と握力は関係がある
最近、65歳以上の798人のデータ解析を行いました。
糖尿病の疑いのある方はたった1.8%です。おそらく東京都では30%ぐらいだと思います。認知症の疑いのある方は7.5%しかいらっしゃいません。サルコペニア(筋肉量が減少する老化現象)の疑いをみる握力測定で低下した方は17.1%しかいない。極めて健康な人たちの集団であると、このデータだけを見てもわかります。
フレイル(身体能力の低下をはじめ、認知機能の低下、社会とのつながりの減少により、心身ともに機能が低下すること)について、指標を用いて調べたところ、京丹後の798人の中でフレイルだとみなされるのは15%しかいない。このように京丹後の住民は、平均寿命が長いだけではなく、病気も少なく、健康長寿な集団であります。

  さて皆さん、同級生のことを考えてみてください。すでに亡くなられた方も、病気の方もいるはずです。
このことから、暦の年齢は同じでも、生物としての年齢は違うんじゃないかということは容易に予測できるわけであります。これを「生物学的老化スピード(PoA : Pace of Aging)」といいます。人によって大きな幅があります。
ニュージーランドで1972年から73年に生まれた1037人を20年間追いかけた調査があります。25歳から45歳までのデータを集めると、いろんなことが見えてきました。この期間を、どういうライフスタイルで過ごすかが健康に大きな影響を与えるのです。たとえば同級生の中でも、早く老化する人と、ゆっくり老化する人がいるということが見えてまいりました。
皆さん、どういった人が早く年をとると思いますか。
生物学的老化スピードが速い人の特徴は、一番が、歩行速度の遅さ。二番が、握力の弱さです。筋力は極めて重要です。また、バランス能力や聴力視力も重要です。
「見た目」、これも大事です。化粧じゃないですよ。「見た目」です。さらに、老化について否定的であればあるほど、その人は老けているということがわかっています。「私はどっちみち75歳まで生きられない」と考えただけで、どんどん老けているわけです。

どのようにしたら筋肉を維持できるのか。「牛肉を食べて筋力を維持できる」という発想は早く捨ててください。大規模なデータで見れば、そんなデータは出ないと思っています。 握力が低ければ低いほど、認知症の発生率が高くなります。聴力は、ほっておくと、どんどん生物学的年齢が進むということもわかっています。 情報が入ってきた方が老けない。ぜひ、補聴器にもお金をかけてください。耳から情報がちゃんと入ってくるということだけで認知症が予防できるからです。

「見た目が若い」は長生きにつながる?

  「見た目」はとても大事です。最近、写真から、あなたの老けた程度がわかりますというサービスがあります。 私は2025年大阪・関西万博の大阪パビリオンのアドバイザーです。テーマは、「パビリオンに来てもらい、出ていくときに5歳若返る」ということにしました。2回来ていただいたら10歳若返る。ぜひ来てください。
筋肉や骨格筋を維持するにはどうしたらいいか。どういった食べ物を食べたらいいのか。地中海食がいいのか。日本食がいいのか。カロリー制限がいいのか。絶食がいいのか。もう世間にはいっぱい、いろんな情報があふれています。さらに、さまざまな老化細胞をやっつけるようなお薬であったり、ワクチンであったり、いろんなものが開発されています。
あと10年ぐらいしたら、「若返り薬」が本当にできてくると私は思っています。ネズミではすでに成功していますから。というのは、若いネズミの糞便を年老いたネズミに移植したら、そのネズミは若返るんですよ。ネズミの握力も回復します。ネズミで成功してるのだったら、人はもうすぐです。
だから、できるだけ若い人と友達になった方がいいですよ。若くて元気な、肉を食べないで運動をしているスポーツ選手の糞便を手に入れといた方がいいかもしれないです。
京丹後の人たちを「暦年齢以上に若く見えるグループ」「暦年齢以上に老けて見えるグループ」「暦年齢相当のグループ」の三つに分けてみました。ちょっとびっくりしたのですけど、男性は全体の15%ぐらい、暦年齢以上に5歳若い人がいます。
また、15%ぐらい暦年齢以上に5歳老けた人がいます。女性は平均的に、皆さん同じように老けています。このうち、若いといわれる15%の男性は、おそらく私の予測では、長生きするだろうと思います。
長寿にかかわる腸内細菌は何か 
「腸内細菌科細菌」というものが多いと死亡率が上がるということが最近、フィンランドの研究でわかってきました。腸内細菌科細菌とは、たとえば大腸菌であったり、サルモネラ菌であったりします。これが日本人にあてはまるかどうかはまだまだ疑問です。
私たちは京丹後の人たち約800人のデータ解析から、年齢予測をするうえで重要な菌を最近、三つ見つけています。特に「短鎖脂肪酸」や「酪酸産生菌」は非常に重要だと思っています。
最近、「私の腸内細菌を調べてほしい」という要望がたくさん来るようになりました。日本人はA型からE型の五つの型(エンテロタイプ)に分類できるということがわかってきました。
A型は毎日のように動物性たんぱくや高脂肪をとっている人です。E型は、非常にヘルシーな、肉を制限しながら野菜の多い食事をされている人です。C型は、ラーメンや焼き飯みたいな炭水化物が大好きな人です。一番多いのはB型で、なんでもバランスよく食べている人たちだということも見えてきました。

自分がどの型なのか、ふるさと納税で調べられます。大阪府枚方市のふるさと納税です。おうちに検査キットが届くので、糞便に突き刺してですね、こぼれないように締めて、袋に入れて郵便ポストに入れていただく。われわれが解析して2週間後に結果をお返しします。
Aだったなとか、Bだった、Cだったということがわかります。それを見れば食生活の反省にもなります。3カ月ぐらいしてから、もう1回検査してもらう。時々チェックしていくことが大事です。

何を食べる? 食物繊維はフレイル予防に役立つ期待
さて最後に、お待ちかねの「何を食べたらいいのか」です。
たとえば、フレイルが進めば進むほど、肉をたくさん食べているかといえば、全く関係はありません。動物性たんぱく質、植物性たんぱく質、脂質、炭水化物、それぞれの摂取量とフレイルの係数はあまり相関がないんですよ。
つまり、いかに現代の栄養学は難しいかということです。これまでわれわれは、白いご飯は何単位で何カロリーで、という計算ばかりして、それを患者さんに勧めてきた。
でもよく考えたら、食べたものが腸で分解されたり吸収されたりする過程で、これだけ腸内細菌の役割が重視されているということは、食べているものだけ見ていても、その人のいろんなことが見えてこないのは当然じゃないかと私は思っています。
新しい栄養学が必要です。そこには腸や腸内細菌の考え方を入れることが必要だと思います。
ひとつだけ、非常に弱いんですけども、フレイルに抑制的に働くものとして食物繊維があります。
ネズミの実験で、食物繊維のないえさを食べたネズミの筋肉(ヒラメ筋)は8週間すると筋肉の断面積が小さくなり、萎縮してしまうんですよ。そこに水溶性の食物繊維を添加すると、筋肉が回復します。ネズミの握力を測ると、元に戻ってきている。
少なくともネズミにおいては、食物繊維は極めて重要であるということがわかったわけであります。
われわれの体の栄養や免疫をコントロールするのは大腸ではありません。小腸です。食物繊維を摂取することによって、小腸で起きるさまざまな現象を食物繊維が抑制し、炎症を抑制してくれる。そのことの結果として、脂肪肝が抑制されたり、筋肉の萎縮が抑制されたりしているというのが私の今の仮説であります。

図表を示しながら講演する内藤氏=6月27日、東京都江戸川区のタワーホール船堀で

日本食をめぐるデータが最近、増えてきました。
日本食のスコアが高ければ高いほど循環器疾患や心疾患の死亡率が低い。国立長寿研究所のデータでは、日本食スコアが高ければ高いほど、腸内細菌の状態もよく、認知症も少ないということが発表されています。
日本人の握力データから、筋肉量が減少するサルコペニアの予防のためには、地中海食より日本食の方が良いという論文も発表されています。私は、日本人の腸内環境や腸内細菌にマッチするのは日本食じゃないかと考えております。
京丹後の人たちの日本食スコアをこのように計算しました。

皆さんがお好きな肉はマイナス1点がつきます。あとはプラス1点がつくわけであります。みそ汁や海藻、漬物や緑黄色野菜、豆類、緑茶、コーヒー。
コーヒーは実は日本食なんです。皆さん、へーと思うかもしれませんが、コーヒーは世界的にかなり認められている健康な飲み物なんです。ただ、砂糖を入れたらだめですよ。 では日本食だけ食べていたら、フレイルのスコアが低いかというと、若干低いんですけど、約800人のデータからすると、そんな強い相関がないです。
つまり、われわれは、フレイルを予防するために良い食べ物をまだ見つけられていないというのが今日の結論であります。
食物繊維がいいとしても、それだけではなかなかうまくいかないんです。
良い腸内細菌を増やすための食べ物は何か。いろいろ探しました。ひとつだけわかっているのは、納豆、豆腐。これは絶対プラスに働いてます。もうひとつは、赤肉摂取を制限すること。この二つを守っていただけたらと思います。豆類の摂取と、肉・ハム類の摂取制限。ソーセージはだめです。
まだ横断的な研究ですので、これから10年ぐらいたったら、その時の研究成果をもって、もう一回ここ(講演会場)に帰ってきます。そのときに「申し訳ありませんでした。あのとき、あんなエラそうなこと言っていましたけど、本当は魚でした」っていうかもしれません。

腸内細菌の種類が豊富なタンザニアの狩猟民族
この6月に、アフリカのタンザニアの「ハッザ族」の腸内細菌が発表されました。彼らは狩猟民族です。農業をしていません。狩猟と、山にある木の実や野菜を食べています。いわゆる自然にいるものを取って食べている。
彼らの腸内細菌の多様性は、実はですね、大変優れているんです。彼らの腸内細菌の種類は730で、もっとも豊富な腸内細菌を持っているんです。ネパールで農業をしている人たちは436です。ネパールでちょっと近代的な生活をすると317です。カリフォルニアの都会の人は277。
つまり、われわれは長い歴史の中で、本来持っていた腸内細菌を、都市化とか、様々な便利さを手に入れた代償に失ったのではないか。
かといって、ハッザ族にもどるわけにもいきません。
減ってしまった腸内細菌を、次の世代や孫の世代で少しずつでもいいから、なんとか増やしていくような作戦を考えなければ。そうしない限り、甘いものを食べ、お肉を食べていると、次の世代の腸内細菌はどんどん減っていくんじゃないかと思います。その結果として、アレルギーが増えたり、メンタルの問題が増えたりするわけです。
昨年、オランダで腸内細菌を調べた研究で、善玉菌といわれている菌にもっとも作用している食べ物は何かというと、「田舎に住むことと健康な食べ物を食べること」だとするものがありました。
つまり、東京にいる限り、どうもダメみたいですね。田舎に行って健康な食べ物を食べることこそが、次の世代に腸内細菌をしっかり残す方法ではないか、というようなことまで、いま言われております。
最後に一言。最近、アメリカでフラミンガム心臓研究というところから、「フレイルを予防する食べ物は果物と野菜だ」という論文が発表されています。なかでも大切なのはフラボノール類のケルセチンだという論文です。
日本人はケルセチンをとっているかというと、けっこう適切にとっているのです。なぜなら、緑茶です。緑茶。日本人にとってのケルセチンは、いわゆるポリフェノールといわれているものです。
私たちも今、京丹後で緑茶を飲んでいる人たちは本当にお元気なのか、という解析を進めているところであります。

《会場からの質問》
会場からは内藤教授にさまざまな質問が寄せられました。
Q ソーセージはいけないとおっしゃいましたが、魚肉ソーセージもだめですか。
A どうしてもソーセージを食べたい方は、魚肉にしていただいたほうが圧倒的に良いと思います。実は、京丹後の方々のたんぱく源は、豆と魚がワンツーです。これだけ海に囲まれている日本ですし、魚は日本人にどうしても必要です。

Q 発酵食品が体に良いと言われて、ここずっと毎日ヨーグルトを食べていますが、それでいいでしょうか。
A 日本人は圧倒的にヨーグルト大好きであります。京丹後でも45%ぐらいの方が「毎日ヨーグルトを食べる」と調査に答えているんですよ。副作用も全くないわけですから、ぜひ自分の体に合ったものをとってもらったらいいと思います。

(注)コホート研究 ある集団を長い期間にわたって追跡し、病気や健康状態の変化を調べる研究のこと。コホートとは「数百人の兵隊」を意味するラテン語に由来し、医学では「一定期間にわたって追跡される人々」という意味で用いられる。ある一時点について疾病や要因を調べる横断研究ではなく、時間的な経過を追う縦断研究のひとつ。 (ライター・橋本聡)

朝日新聞 Reライフ.net つながる。変わる。人生ここから 2023年08月18日

https://www.asahi.com/relife/article/14964604

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