ママ友・パパ友でも差がつく「見た目年齢」のヒミツとは?

子どもの運動会や授業参観で、ふと気になる他の保護者の見た目。「あの人は私より年上のはずなのに若々しいな」「私の方がちょっと老けて見えてないかな」──それは単なる印象ではないのかもしれません。
近年の研究で、老化の進み方には“個人差”があることが明らかになりつつあります。この“老けやすさ”を左右するカギの一つが、実は「腸内環境」なのだとか。
今回は、腸活のエキスパートである工藤あき先生に、見た目年齢と腸内環境の関係、そして今日から始められる対策について伺いました。
一般内科医/消化器病専門医
工藤 あき先生
くどう・あき 1988年生まれ。一般内科医/消化器病専門医。腸内細菌・腸内フローラに精通し、腸活×菌活を活かした美肌やエイジングケア治療が人気を集めている。コメンテーターとしてメディア出演も多数。日本内科学会認定医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医等の資格を保有。
2025年8月より東京・五反田のアロリエクリニック(婦人科)にて「美腸活外来」を担当している。
●同い年でも老け方に差が出るのはなぜ?
—— 子どもの運動会や授業参観などで保護者と並ぶと、「なぜかあの人だけ若い/老けている」と感じることがあります。これは単なる印象に過ぎないのでしょうか?
以前はそうした見た目の差について、雰囲気などの印象で語られがちでした。しかし近年は科学的に語られるようになり、実は細胞レベルの違いが影響していることが研究でわかってきました。また、見た目が若い人は、内臓や細胞も若い傾向があることも明らかになってきています。
例えば、ニュージーランドで行われた研究で、約1,037人を20年間追跡したところ、同じ年齢の人でも、1年で体が0.4歳しか老けない人もいれば、2.44歳分も老化が進んでしまう人もいるということが確認されました。つまり、老化の進み具合に最大2歳以上の開きが出たということです。この老化の進み具合は「PoA(ピー・オー・エー)」と呼ばれています。

●注目されるキーワード「PoA」とは?
—— 「PoA(ピー・オー・エー)」について、もう少し詳しく教えてください。
PoAは「Pace of Aging(ペース・オブ・エイジング)」、つまり老化の進行スピードのことを指します。誰もがカレンダー通りに年齢を重ねますが、体の中は“年のとり方”に差があるという考え方です。例えば実年齢が40歳の人でも、体内年齢は38歳かもしれないし、42歳かもしれない。そうした違いを科学的に可視化するための指標として、PoAという概念が注目されるようになりました。そして近年では、老化スピードを測定する技術も開発されています。
●老化スピードは腸で変えられる?
—— 腸内環境が老化スピードに関係しているのですか?
はい。近年の研究では、腸内環境の乱れが老化を早める重要な要因の一つとして注目されています。昔から「腸は健康のカギを握る」といわれてきましたが、腸内環境を整えることが、体調や免疫だけでなく、老化のスピードにも影響することが分かってきています。

—— 腸内環境が整った状態というのは、どういうことなのでしょうか?
以前は「善玉菌」「悪玉菌」「その他の常在菌」といった分類で語られることが多かったのですが、今はもう少し進んだ見方がされていて、「菌の多様性(ダイバーシティ)」を保つことが大切だと考えられています。
例えば、以前は悪者扱いされていた菌の中にも、「実は良い働きをしていた」ということが分かってきている菌もあり、どの菌がどのように体に作用するかは、まだまだ解明されていない部分も多いんですね。だからこそ、「良い菌だけを増やす」というよりも、「さまざまな菌が共存している状態を保つ」ことが、結果的に体にとって良い環境をつくってくれる、というのが現在の考え方です。

●今日から取り組める“腸活”は?
—— 腸内環境を整えるために、私たちが日常生活でできることは?
具体的には、ビフィズス菌や乳酸菌といった「菌そのもの」と、それらの菌の「エサになるもの」の両方をとることが大切です。 菌を摂取する上でのポイントは「多様な菌をとること」。先ほどもお話ししたように、腸内細菌の多様性を保つことがとても重要なので、いろんな種類を少しずつとるように意識してみてください。
—— たとえば、おすすめの菌はありますか?
代表的な善玉菌としては、乳酸菌やビフィズス菌等がありますが、これらは性質や働きが全然違うのです。近年では特に、ビフィズス菌の働きに注目が集まっています。ビフィズス菌は年齢とともに減少しやすい菌ですが、腸内細菌を多様にする働きがあると考えられています。例えばビフィズス菌がつくる酢酸は、酪酸菌のエサになって酪酸菌を増やします。さらにビフィズス菌は、腸内の有害な物質を体にとって有用な物質「ILA(インドール-3-乳酸)」へとつくりかえてくれることも分かってきました。この働きは、腸内環境の健全化や老化スピードの抑制にも関わっている可能性があります。
実際、世界的な長寿地域として知られる奄美群島でも、元気な高齢者の腸内にはビフィズス菌が多いという研究結果が出ています。

—— もう一つの、菌の「エサになるもの」とは?
代表的なのが食物繊維です。特におすすめなのが、水溶性の食物繊維。海藻やオクラ、なめこなどの「ぬるぬる・ねばねば系」に多く含まれていて、腸内を潤しながらスムーズに便を出す助けにもなります。一方で、不溶性食物繊維は、とりすぎるとお腹が張ったり便秘を悪化させたりしてしまうこともあるので、注意が必要です。
—— ビフィズス菌はどうやって取り入れたらいいのでしょうか?
ビフィズス菌をとれる食品はヨーグルトやサプリメントぐらいですので、そのような食品でとるのがおすすめです。
また、菌は「継続してとること」が大切です。食事でとった菌は、腸内に定着しづらいと言われていますので、少しずつでも毎日続けることがポイントですね。
特にビフィズス菌は、年齢とともに減少してしまうことが分かっています。そのため意識してとることが大切です。ヨーグルトは乳酸菌で発酵させてつくるので、全てのヨーグルトに乳酸菌は入っています。一方で、ビフィズス菌は全てのヨーグルトに入っているわけではありません。ビフィズス菌を確実に取り入れるには、パッケージに「ビフィズス菌入り」と明記されている商品を選ぶのがおすすめです。ビフィズス菌入りヨーグルトは、乳酸菌とビフィズス菌、2つの善玉菌が同時にとれるんですよ。

“若々しさ”を楽しむ、これからの生き方
—— 工藤先生ご自身は「理想のエイジング」について、どのようにお考えですか?
よく「アンチエイジング」といわれますが、最近は“抗う”というより、“どう受け入れていくか”という考え方に変わってきているように感じます。学会などでも「ウェルエイジング」──つまり“よい老い方”という言葉がよく使われるようになっています。
例えば日本は世界有数の長寿国ですが、人生の最後の10年は「健康ではない10年」になりがちともいわれています。それは“老化に伴う病気”の期間なんですよね。そう考えると、老化そのものをなるべく穏やかに進めていくことが、健康寿命を延ばすことにもつながると思うんです。老化によって病気になったり、やりたいことができなくなってしまったりするのは、できれば避けたいですからね。
—— 今後老化スピードや腸内環境の研究が進めば、さらに対策が進化しそうですね。
ただ、それだけが選択肢ではありません。腸にいいものを食べる、ビフィズス菌などの善玉菌をとり入れる、体をよく動かす──むしろそういった日々の小さな選択を積み重ねることで、老化スピードを緩やかに保つことが重要です。老化スピードを緩やかにすることで高額な医療や特別な治療が不要になる方がいいですよね。例えば食事は1日に3回、1年で約1000回もタイミングがある訳ですから、毎回の食事を大切にすることが実はとても大切なんだと思っていただけるとよいかと思います。自分でできること、取り組みやすいことを見つけて、楽しみながら若さを保っていけるといいですね。
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